「誰かに触ってもらいたい」の壁
個人開発でアプリを作り終えたあと、多くの人がぶつかるのがこの壁です。コードを書く力があっても、それを誰かに使ってもらう力は別物だからです。SNSのフォロワーが数百人しかいない、知り合いにエンジニアしかいない。そんな状態でリリースした瞬間、アプリは静かな部屋に置かれたまま誰も来ない、ということがよくあります。
ここでは代表的な3つの集め方、SNS募集、知人への依頼、テストプラットフォームの利用を、実際に使う場面を想定しながら比較していきます。
SNSで募集する
X(旧Twitter)で「テストしてくれる方募集」と投稿する方法は、個人開発者の間でもっとも一般的です。拡散されれば一晩で数十人が集まることもあり、コストはほぼゼロ。
ただし、集まる人の多くが「同業者」であることには注意が必要です。家計簿アプリを作ったのに、返ってくる感想の大半が「このライブラリ使ってるんですね」「UIのここが気になります」といった開発者目線のもので、肝心の「家計簿として使いたいと思うか」という声が埋もれてしまう。フォロワーの属性が偏っているほど、この傾向は強くなります。あるToDoアプリの開発者は、SNS経由で20人からフィードバックを集めたものの、実際にターゲットユーザーだった人はわずか2人だったと話していました。
知人に頼む
友人や家族に使ってもらうのは、もっとも手軽で心理的ハードルも低い方法です。問題は、彼らがあなたとの関係を壊したくないという理由で、率直な感想を飲み込んでしまうこと。「使いにくい」と言うべき場面で「まあまあいいと思うよ」で終わってしまいます。
これは悪意ではなく、人間関係として自然なことです。だからこそ知人からのフィードバックは参考程度に留め、致命的なUXの欠陥を見つける手段としては期待しすぎないほうがいい。褒め言葉の裏に隠れた違和感を、こちらから拾いにいく姿勢が必要になります。
テストプラットフォームを使う
Revumeのようなテストプラットフォームは、見知らぬユーザーに構造化された形式でフィードバックを依頼できる仕組みです。テスターは第一印象、バグ、改善提案などを決まったフォーマットで提出するため、SNSでよく見かける「なんとなく良かったです」で終わる感想とは違い、次のアクションにつながりやすい。
利用にはポイントという形の対価が発生します。Revumeでは1件あたり100pt〜(1pt=1円相当、ギフト券に交換可能)が目安で、質の高いフィードバックにはそれ以上のポイントがつくこともあります。無料で募集する方法に比べればコストはかかりますが、その分「お願いだから使って」という関係ではなく、対価に見合う責任を持って使ってもらえるという利点があります。バグ報告が再現手順つきで返ってくる、UIの指摘が画面名とセットで返ってくる、といった質の差は、いざ使ってみると想像以上でした。
コミュニティに投稿するという第4の道
個人開発者が集まるSlackやDiscord、掲示板系のコミュニティに投稿する方法もよく使われます。SNSより属性が近い分、的確な指摘が返ってくることが多い一方で、そこにいるのはやはり開発者ばかりです。相互レビューの文化があるコミュニティでは「自分も見てもらったから」という義理で感想を書く人も多く、辛口な指摘より当たり障りのないコメントに寄りがちな傾向があります。技術的な相談相手を見つけるには最適でも、一般ユーザーの反応を知りたいという目的とはややズレることを覚えておいた方がいい。
時間とお金、どちらを使うか
結局のところ、この選択は「時間をかけるか、お金をかけるか」というトレードオフに近い部分があります。SNSや知人への依頼はお金がかからない代わりに、母数を増やすための発信や声かけに時間を使うことになります。ゲームアプリのように話題性でバズを狙える分野なら発信のコストに見合う結果が出ることもありますが、ニッチな業務効率化ツールのようなジャンルでは、SNSでどれだけ発信してもターゲットに刺さらないまま時間だけが過ぎていく、というのはよくある話です。
テストプラットフォームはポイントという形でコストを先に払う代わりに、ターゲットに近いユーザーへ短期間で届けられます。1週間かけてSNSで反応を待つより、数日でまとまった件数のフィードバックが揃うほうが、次のバージョンの意思決定を早められる場面は多いはずです。
どう使い分けるか
実際には、これらは排他的なものではありません。開発初期の見た目や機能のすり合わせは知人に、拡散を狙った認知獲得はSNSやコミュニティに、構造化されたフィードバックが欲しい検証フェーズにはテストプラットフォームに。段階ごとに使い分けるのが現実的なやり方です。
一つだけ言えるのは、無料の方法だけに頼っていると都合の良い感想しか集まらない状態に陥りやすいということ。耳の痛いフィードバックほど、リリース後の評価を左右します。集める手段を一つに絞らず、足りない視点を別の方法で補っていく感覚が、結局は近道になります。